SCENE

誰かと思ったらクラスメイトの相馬藤彦くんだった。
相馬くんってこんなに背が高かったんだ、
とわたしは初めて知った。

「こんな本に興味があるの?」

相馬くんがわたしに笑いかけた。
笑顔がきれいでわたしはどきどきした。
けっこう大きなその本を胸の前で抱きしめる。
「なんだあ、おめぇ」

言いながら近づいてくる。
足がすくんで背筋が冷たくなった。

「女のくせに俺たちになんか文句があるのかよ」

「……乱暴はやめてください」

さっきより声が出なくなった。
二年の男子たちはみんな大きく、
わたしには壁のように見えた。
 森田さん………逃げて………!