豊川は帯を解いた。しゅるしゅると帯が暗い空間に漂って消える。さらりと着物が足元に落ち、それもやがて溶けてしまった。
「―――おいおい」
往壓は豊川の体を見て目をむいた。
「両方あるのかよ」
豊川の胸には豊満な乳房がついている。だが股間には人のものにしては長く細い根がついていたのだ。
「お気にめさないかい。でも大丈夫だよ」
豊川は往壓の手を取ると自分の股間の奥へ滑らせた。往壓の眉がぴくと跳ね上がる。
「こっちもあるのか………」
豊川の根の奥には女の泉もあったのだ。
「どっちでもあんたをかわいがってあげられるよ」
「俺ァこっちでいいよ」
往壓は奥にいれたままの指を動かした。ねばく熱い泉が沸くそこは、柔らかい襞に包まれている。豊川の唇が喜悦に緩んだ。
「今日はたっぷりあんたを食いたいからね………どっちも使わせてもらおう」
「んなこと言っても俺がこっちを使ってたら―――」
「あたしはあやかしだからね」
豊川は口を大きくあけた。真っ赤な輪の中から出てきたのは今まで吸いあっていた舌ではない。獣の陰茎だった。
「さあ、しゃぶっておくれ………喰っておくれ………あんたを喰わせておくれ………」
豊川は往壓の張り詰めた芯の上に女の肉をおろし、口の中に男の肉を押し込んだ。
「……っん、ぐ、」
往壓の上で腰をくねらせながら、豊川は根を容赦なく押し込んでくる。のどの奥に当たる苦しさに、往壓の目から雫が伝った。
「ああっ、悦いッ」
豊川は髪を振り乱し、往壓を締め上げる。ただでさえ放出を止められていた往壓はたまったものではない。あっという間に豊川の肉を濡らした。
豊川が顔を引くと根は消え薄い舌が覗く。それが長く伸びてペロリと唇をなめた。
「さあ、こんどはこっちだ」
足を抱えられ折り曲げられる。さっきまで往壓が銜えて育てたものが狐の股間に聳えていた。
往壓は諦めのまじった目で豊川を見上げた。
「そっちは最近あまり使ってないんだ。お手柔らかに頼むぜ」
「おや、そうだったかねえ」
豊川は指を伸ばしてするりと中にもぐり込ませた。ぬるぬるしたものが指と一緒に擦りつけられる。内側を刺激され、往壓は目を閉じた。
「こっちの方がお好みかえ」
「気持ちよけりゃどっちだっていいさ」
放り投げるように言った往壓に豊川は顔を近づけ、鼻の頭をなめる。
「そんなヤケになるんじゃないよ」
指がくちゅくちゅと蠢き、回りを柔らかくしていく。豊川の指は二本になり、三本になった。ぱらら…とほぐすように動かされ、往壓の口からため息が零れる。
中への刺激でまた育ったものを愛しげに撫でると、狐はゆっくりと根を往壓の中に埋めた。
「………あ、あ………」
往壓の腕がもどかしげに伸ばされる。豊川はそっと抱きしめてやった。
「妖夷も―――あったかいもんだな」
「あたしたちは人を真似ているだけさ」
豊川が笑う。
「人の思いが、祈りがあたしたちを形作る。こうあって欲しいという思いが」
その言葉に往壓は唇を噛んだ。
「………それで、お前たちは辛くないのか」
「あやかしに辛いかと聞くのかえ、人の子が」
豊川はしかし、優しく笑う。
「辛くはないさ。求められるのがあたしたちなんだから。祈りが、思いが、求めがなくなれば消えてしまう。それでも辛くない、哀しくはない。あたしたちはそんなものさ」
往壓はぎゅっと狐の身体を抱く。
「こんなにあったかいのに」
往壓が自分を通して誰を―――何を見ているのか、豊川は知っている。ソレもまた往壓の求めに応じて生み出されたあやかしだ。
(アタシが手を出したことを知ったら怒るだろうねえ)
クスリ、と豊川は美貌の面【おもて】で笑う。
往壓の内側がさざめいてねだる。豊川は応じて深く突き上げた。
往壓の声が暗闇を紅く色づかせる。
(切ないねえ………人は)
(かわいいねえ………人は)
だからあたしたちは人を求めてやまない。
(そうだろう?)
今は異国の神と一体となったあやかしに向かってつぶやく。答えはなかった。ただ往壓の吐息だけが闇の中を満たしていった。